World's Blackest Black!
こんにちは、暗素研新製品担当の鉄平です。
先月はパシフィコ横浜で行われた、国内最大級の光学展示会OPIE'19への出展を行いました。おかげでブログを更新することができませんでしたが、弊社の内面反射防止素材「ファインシャット極」の展示は大好評でした。しばらくはB to B案件で忙しそうです。
また、展示会ではついに実物を見てきましたよ!世界で最も黒い表面処理、ベンタブラック(Vantablack)のサンプル。
確かに凹凸がわからなくなるほど黒いです。しかし、処理する対象物に430℃以上の耐熱性が必要なことや、カーボンナノチューブの安全性に関する問題点を聞き、まだまだ一般の方が目にできる機会は無いかと感じました。お値段もすごいらしいです。
>>Vantablackを詳しく紹介した過去ブログ記事はこちら
さて、今回の記事はそのベンタブラックとも関わりがあるBlack 3.0という塗料の検証記事となっております。弊社の過去のブログ記事の続きとなっておりまして、未読の方はぜひそちらから御覧ください。
ベンタブラックの使用権を巡る争いから生まれたBlack 2.0という塗料 と、日本が誇る超黒アクリル絵の具、ターナー社ジェットブラックの比較記事となっております。驚きの結果はいかに!?
世界で最も黒い塗料!? Black 3.0を入手
今回評価する塗料「Black 3.0」は、イギリスのアーティスト Stuart Semple氏が販売する超黒い塗料で、従来製品のBlack 2.0の光吸収性能を更に高めた新製品です。"World's Blackest Black" という宣伝文句でクラウドファウンディングサイト Kick Starterで発表されました。19年1月28日の発表から本記事執筆までのたった3ヶ月半で、日本円にしてなんと6,780万円もの出資を集めております。プロジェクトの出資目標金額の20倍に迫る金額で大大大成功と言えるでしょう。
サイトはこちらでございます。
>>Kick Starter "The blackest black paint in the world! Black 3.0"
かくいう私も、いち早く商品を手に入れるため出資した一人です。
弊社は光学機器の内面反射を防止することを業務としておりますから、こういった光吸収塗料は入手して評価しなければなりません。
150mlボトル一本で3,500円(25ポンド)くらいなのですが、最短で手に入れるためのプランが2本セットだったのと、イギリスからの送料もありまして、全部で1万円ほどかかりました。安くないですね。
そんな訳で非常に期待していた訳です。だって「世界で最も黒い」って大きく謳っているんですよ!正直前の自称"The world’s mattest, flattest, black art material” Black 2.0は期待はずれの結果だった訳ですが・・・。
あと初めてのKick Starter利用でしたが、早々に目標達成済みの案件ということもあり、普通の通販サイトのような感覚で利用できました。発送連絡から4-5日たって、はるばるイギリスから弊社にBlack 3.0が届けられました。
Black 3.0 を塗ってみよう
さっそく開封です。私が購入したBlack 3.0は金額の高いプランだったせいか、いろいろなオマケが付いており賑やかです。
よほど黒さに自信があるようで、ステッカーは例のごとくBlackest! Blackest!の連呼。またベンタブラックの使用権をめぐる争いの発端となった芸術家Anish Kapoor氏への揶揄も忘れておりません。おまけのバッヂには「私の名前はAnish Kapoor です ではありません」と書いてあります。ちょっと面白い。
それで左下の鉛筆、”THE BLACKEST PINK”と書いている。・・・って普通の黒鉛筆だわ、これ。なんなんだよ!
しかし、個人的に許せなかったのがゴムのブレスレット。例によって「サポーターの中のサポーター」的なことが書いてある。でもそこじゃない。
私は本社の国際調達事業で、主に外装ゴム部品を担当していたんですよ。それなので
この仕上がりのクオリティはヒドイですね。私が見た中では「最もバリ仕上げが汚いゴム製品」です。英語でなんと言いましょうかね?「World's Burriest Rubber band」?
確かに外装ゴムでリング形状のものは、仕上げが難しいんですよ。重々承知です。
だから、そういった部品の調達にお困りの方は、弊社光陽オリエントジャパン㈱の国際調達事業にお任せください。難易度の高い外装ゴム、特にラバーローレットの供給を創業当初より得意としており、品質要求の高い光学メーカー向けに対しても、30万個/月の安定した出荷を達成しております。日本、タイの生産拠点を活用し、コストメリットにも大変優れており・・・・おっと、大変失礼しました。弊社の宣伝をするつもりは無かったんです。信じてください。
さて、疑いが晴れたところで続きです。Black 3.0のボトルは紙の筒の中にありまして、ピンクの文字のパッケージです。150mlで今回は2本購入しております。
まずは画用紙に塗って、旧製品Black 2.0 とBlack 3.0の黒さの違いをサクッと見てみましょう。Black 2.0は垂らすとトロリと粘度がある感じですが、Black 3.0は明らかに粘度が少なくなっており、ボタボタと落ちます。さてどうかな?
左がBlack 2.0、右がBlack 3.0です。画用紙に塗ったので反ってしまいました。
うん、確かにBlack 3.0のほうが黒い?・・・ですね。若干黒いですね。
でもあまりインパクトが無い変化です。本当に世界一の黒かと言われると、とてもそうは思えません。嫌な予感がしますよ、これは。
前回Black 2.0を圧倒する黒さを見せた、日本のD.I.Y大好きカメラマニアの定番、ターナー社のアクリル絵の具、ジェットブラックとも比較してみましょう。
はい。今回もジェットブラックの方が黒いですね。
Black 3.0 の「世界で最も黒い塗料」という宣伝は何だったのでしょうか。下はガラス越しの太陽光下での写真。自然な光環境でも同様の結果ですね。
結論 Black 3.0は世界で最も黒い塗料ではない
以上、自称「世界で最も黒い 」Black3.0でしたが、前回のBlack 2.0同様に、ジェットブラックよりも黒くないという事が判明しました。黒さを求めるだけであれば、この塗料をわざわざイギリスから購入する必要はありません。また、ジェットブラックの方がよりマットな質感をしており、平滑な漆黒面を得ることができます。
ただし、前回の比較のときも紹介した通りジェットブラックは触った部分にすぐに光沢が発生してしまいます。これは表面の凹凸形状で光を散乱させるマットブラックの宿命ですが、この点はBlack 3.0の方がわずかに耐久性に勝る感じです。
しかし世界で最も黒いという宣伝で、3ヶ月半で7,000万円近く集めるなんて・・・。
マーケティングの上手さというよりも、誇大広告で完全にアウトの案件だと思うのですが良いのでしょうか。
ぜひターナー社様にはジェットブラックの輸出を増やして頂き、世界のアーティストや、反射防止塗料を求めるD.I.Y好きカメラファンに届けて頂きたいと思います。もしくはジェットブラックという製品名を 「Black4.0 」へと変更するというアイデアも有効だと思います。
え、弊社製品の 可視光~近赤外まで対応する 超光吸収ウレタンシート。切って貼るだけで カンタン内面反射防止のシール 「ファインシャット極」との比較ですか?ここでは宣伝するつもりはないので、さっきの比較ボードにちょっと置いてみるだけですよ。参考までにね。(スッ。)
"WORLD'S BLACKEST URETHANE FOAM"
FINE-SHUT KIWAMI
どうぞよろしくおねがいします。
20/04/27 追記
弊社より世界一黒い水性塗膜を持つ塗料、「黒色無双」を販売開始いたします。可視光域はファインシャット極同等の光吸収率99.2%。詳しくはこちらの製品サイトまでお越しください。
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ましらふ (水曜日, 19 2月 2020 16:30)
あざといwwwww
黒フェチ (月曜日, 12 10月 2020 18:28)
卓爾不群…