3Dスキャナーで金属が反射してスキャンできない?反射防止スプレー以外の対策を検証

撮影:株式会社ミューテック35


■ 暗素研ユーザー訪問記 CASE 004
株式会社ミューテック35様」 
  3Dスキャナーが反射・光沢のある金属部品を認識しない課題に挑む

暗素研の「黒」は、どんな現場で活躍しているのか。
実際にご使用いただいているユーザーを訪問・取材し、その声をお届けします。 

キーエンスVL-800の3Dスキャナーにセットされた金属製のL字ブラケット部品。ブルーの構造化光パターンを投影して測定している様子


こんにちは。暗素研の小笠原です。

この記事でわかること

  • 3Dスキャナーで金属部品がうまく認識されない、よくある悩みの原因
  • 艶消しスプレーを使わずに反射を抑える、現場での検証結果
  • 部品そのものだけでなく「置く場所(床面)」に対策のヒントがあった、という発見
  • まだ検証途中の内容のため、精度や再現性に関する残課題も正直にお伝えします


今回訪問したのは、板金加工・半導体製造装置部品を手がける株式会社ミューテック35様です。
部品の寸法測定を効率化するために導入した3Dスキャナーが、金属部品特有の光沢・反射のためにうまくスキャンできない——という課題を抱えていました。

3Dスキャナーとは、レーザーや構造化光を対象物に照射し、反射して戻ってくる光の情報から形状を点の集合(点群データ)として取得する測定機器です。寸法測定や検査工程の自動化に活用されますが、金属表面のように反射率の高い素材は光が正しく返ってこず、データが欠損しやすいという、業界共通の課題を抱えています。

※今回はまだ検証途中の内容ですが、素材選び・置き方のヒントとしてお役立ていただければ幸いです。


この記事は、こんな方におすすめです

・3Dスキャナーの導入を検討している板金加工・金属加工業の方

・すでに3Dスキャナーを購入したが、金属部品がうまくスキャンできずに困っている方

・艶消しスプレー以外の反射対策を探している方

・寸法測定・検査工程の自動化を進めたい製造業の方

・その他、反射や光沢のある素材の3Dスキャンにお困りの方


■今回訪問した企業
株式会社ミューテック35

株式会社ミューテック35の工場で精密板金加工中のレーザー加工機。金属板を切断する際に火花が飛び散る様子

株式会社ミューテック35は、東京都日野市の精密板金・試作板金加工会社です。1990年の創業以来、抜き精度±0.02mm、曲げ精度±0.05mmという高い精密度を強みに、医療ロボットや半導体など多岐にわたる業種の試作・小ロット案件に対応しています。

👉 株式会社ミューテック35様 のサイトはこちら


■なぜ光沢のある金属部品は3Dスキャナーで反射してしまうのか?

株式会社ミューテック35様に導入されたキーエンス製3Dスキャナー「VL-800」。ターンテーブル部分に黒い布状のカバーが取り付けられている

撮影:株式会社ミューテック35


ミューテック35様は、寸法測定のためにキーエンス製3Dスキャナー「VL-800」を導入されました。
従来はノギスによる手作業測定が中心でしたが、効率化のために導入されたとのことです。

ところが、導入時のデモは樹脂製品のみで、樹脂製品は問題なくスキャンできていたものの、導入後、実際に金属製品をスキャンしたところ、反射でうまくスキャンできないという問題が発生したそうです。
金属表面のように反射率の高い素材は、レーザーや構造化光を使う3Dスキャナー全般に共通する、技術的に難易度の高い対象だといえます。

今回3Dスキャンする、L字型のステンレス金属部品。スキャナーのターンテーブル上に置かれ、四隅に配置された三角形の位置合わせマーカーが見える

            
撮影:株式会社ミューテック35

左側の画像が3Dスキャンしたいステンレス製の金属パーツ。

右側の画像は、3Dスキャンしたデータ。
黒い部分が反射によってスキャンされず、データがない状態です。
また、反射で読み取れない影響からか、平面であるはずの金属パーツのデータが波打っているような状態です。

金属だから反射するのは当然ですが、
こんな難易度の高い、反射や光沢がある製品のスキャンなんてできるのでしょうか。


現場での検証:反射を抑えるためにあらゆる条件を変えてみた


奥には現場に置かれた反射防止スプレーの缶が見える。キーエンス製3Dスキャナー「VL-800」のステージ。


3Dスキャン用の反射防止スプレーも試したとのこと。


メーカーからの対処法としては艶消しスプレーの使用が案内されましたが、現場の測定担当者からは運用面で以下のような懸念があがっていました。

・膜厚が場所によって変わる

・塗装する人によって仕上がりに差が出る

・3Dスキャナー用のスプレーの価格が高い

・目当ての場所に正確に当たらない

スプレーという運用コストのかかる方法に頼らずに済む方法はないか
——これが、今回の検証のスタート地点でした。


この難関を打破するために用意した暗素研の素材は、世界一黒い布「太黒門(たいこくもん)」。
この素材を使用し、金属の3Dスキャンに挑戦しました。

以前のブログでは、太黒門を敷いて3Dスキャンを行ったところ、床面からの光の反射を吸収し、スキャン時に発生していたノイズを低減できることを確認しています。

今回はさらに、金属そのものの3Dスキャンに太黒門を活用し、どのような効果が得られるのかを検証しました。

3Dスキャン 参考ブログ👇
【3Dスキャン精度が変わる】黒背景で“スキャンされない環境”を作ったら、ノイズが消えた話


太黒門とは?
販売ページ、詳細はこちら↓ A4サイズから購入できます。

■太黒門(たいこくもん)販売ページ


暗素研が提供する、ブラックフライデーの内装デザイン資材としての超低反射布「太黒門」のロール。光吸収率99.9%を誇る、世界一黒い布の素材感を示しており、店舗装飾や看板に使用することで、イベントの特別感を演出できることを提案している。



測定現場の担当者様とともに、VL-800の床面にの太黒門を設置。
直径50cmの円状にカットをしました。

そして以下の条件を一つずつ変えながら検証しました。
対象素材はステンレスとアルミの2種類で、いずれも金属の中でもスキャン難易度が高い部類です。

・スキャン時の明るさ調整

・読み込むステージの高さ調整

・ブロックで金属部材のみ高さをあげる調整

・金属部材の置き方(角度の調整)

・スキャナー内壁への「太黒門」貼付

・スキャンモードの変更(高精細/通常)

このうち、スキャナー内壁への太黒門の貼付は、今回の検証ではあまり効果がありませんでした。
金属部品そのものの反射という、素材の外側ではなく素材自体の問題には、内壁の反射対策だけでは届かなかったということです。

    ■ 光沢のある金属の3Dスキャン、突破口はなぜ「床面」にあったのか?

    検証を進める中で分かってきたのは、置いた場所の床面からの反射だけでなく、金属部材そのものの反射もスキャンを妨げていたという点でした。

    3Dスキャナーの回転台に置かれた金属パーツ。平らな面が床面と水平になっているため、光を反射しやすい置き方
    床面に何も敷いていない通常の状態で、光沢のあるステンレス部品を3Dスキャンした際のデータ。反射により大部分が欠損している


    ※スキャン
    時には、VL-800のステージ上に太黒門を敷きました。

     

    まずは測定台(床面)全体に暗素研の「太黒門」を敷きます。
    金属パーツをその上に置いて3Dスキャン開始。
    すると、金属部材を床と水平に置いた状態(写真左)では反射の影響が出て、3Dスキャンができません。


    ここで、部材自体の底面が反射しているのではないか、という仮説が浮かびました。


     ■ 金属部材の角度を変えて再検証

    金属パーツを立てて置いた状態。床面と水平な平面がないため、反射によるスキャンへの影響を抑えられる置き方
    太黒門を敷いた床面で、金属部材の向きや角度を工夫してスキャンした3Dデータ。反射による欠損がなく、寸法まで読み取れる結果が得られている

    ※こちらもスキャン試験時には、VL-800のステージ上に太黒門を敷きました。

    結果は——一回だけのスキャンですが、反射でスキャンデータが欠損している部分がないようです。
    床からの反射が金属パーツの3Dスキャンを妨げる。
    この実験結果をもとに、対策をまとめると、

     対策
    ①床に太黒門を敷く。
    ②床面と金属パーツが水平に置かれないよう、金属パーツの置き方を変える。

    金属パーツの色味も、実物に近くなっているところも注目ポイントです。



     ■3Dスキャンの寸法精度、まだ残っている課題(正直にお伝えします)

    今回の検証で前進はありましたが、まだ完全に解決したわけではありません。現時点で残っている課題は次の通りです。

    ・スキャン結果が実寸より100分の8mm(0.08mm)ほど小さくなる傾向があり、ノギス測定と同じ寸法になることが望まれる

    ・公差について問題ないかは、検証数がまだ少なく現時点では回答できない

    ・部材の形状によっては、床面からの反射を防げないものもある

    ・L字の奥まった部分、穴の側面など、スキャンが苦手な箇所がいくつか判明している(反射が起きやすい、スキャンの光が入っていかないなど)

    ・金属パーツごとにちょうどいい角度を探すのは手間がかかる

    ■まとめ:3Dスキャンの反射対策は「素材側」だけでなく「置き方・環境側」にもある

    今回の検証で分かった一番の収穫は、反射対策は対象物そのものへの処理だけでなく、置く場所・環境側の反射をコントロールすることでも改善できるという点です。
    スキャナー内壁への対策では効果が薄かった一方、部材を置く床面側の対策で前進が見られました。

    同じような機械を導入して、金属部品の反射に苦労している企業は、他にも少なくないようです。
    3Dスキャナーによる金属部品の寸法測定でお困りの方、同じような反射トラブルを抱えている方は、ぜひ一度ご相談ください。

    ミューテック35様への訪問・検証は今後も継続する予定です。
    次回もこの続きをレポートします。

    株式会社ミューテック35様、このたびは貴重なお時間と現場での検証にご協力いただき、誠にありがとうございました。(検証日:2026年7月30日)


    ■ よくある質問(FAQ)

    Q. 3Dスキャナーで金属部品がうまく認識されないのはなぜですか?

    A. 光沢や反射率の高い金属表面では、レーザーや構造化光が正しく返ってこず、データが欠損しやすいためです。樹脂製品と比べて、金属製品は3Dスキャンの難易度が高い代表的な対象です。

    Q. 艶消しスプレー以外に、3Dスキャンの反射を抑える方法はありますか?

    A.  今回の検証では、床面に太黒門を敷いた上で、金属パーツが水平にならないよう置き方を工夫することで、反射を抑えられることが分かりました。ただしまだ検証段階であり、部材の形状によっては効果が限定的な場合があります。

    Q. 3Dスキャンによる寸法測定は、ノギス測定と同じ精度になりますか?

    A. 現時点の検証では、スキャン結果が実寸より0.08mm程度小さくなる傾向が見られており、公差の観点で問題がないかは今後さらに検証が必要な段階です。


    👉販売ページはこちらから(気軽に試せるA4サイズからあります)

    暗素研が提供する、ブラックフライデーの内装デザイン資材としての超低反射布「太黒門」のロール。光吸収率99.9%を誇る、世界一黒い布の素材感を示しており、店舗装飾や看板に使用することで、イベントの特別感を演出できることを提案している。


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