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墨より黒い下地の上で、墨が光る。KURO《Series C》と真・黒色無双

墨は黒い。

書道に触れたことがある人なら、誰もがそう思うはずです。
では、墨よりもさらに黒い面の上に墨を置いたら、何が起きるのでしょうか。

現代アーティストKUROさんの作品シリーズ《Series C》は、
超低反射塗料「真・黒色無双」で仕上げた下地の上に、墨と鉛筆を重ねた作品群です。
使われている素材は、すべて黒。

銀色に輝く黒鉛と、黒の中から浮かび上がる墨 ―

けれど、冒頭の刀の作品「KATANA」も、このすぐ下の書の作品「舞」も、白い顔料で光を描いているわけではありません。
光って見えるのは、黒い素材が返す光です。
どちらも、《Series C》の作品です。

現代アーティストKUROの《Series C》「舞」。真・黒色無双の黒い下地の上に、墨と黒鉛で書かれた線が銀色に光って見える 《Series C》「舞」
KURO/書道家 岩尾諭志

KUROさんは、以前から真・黒色無双を作品に使ってくださっているアーティストです。
このたび、作品の成り立ちをまとめた論考を私たちに届けてくださいました。

黒い素材だけで、ここまで豊かな表現が生まれる。
真・黒色無双を使ってくださる方にも、
黒に惹かれるすべての方にも知っていただきたいと思い、
ご本人の了承を得てご紹介することにしました。

この記事では、その論考「墨を未来へつなぐための黒」(2026年9月)をもとに、
《Series C》の仕組みと、その背景にある「書の文化を未来へ残したい」という思いを紹介します。

【この記事でわかること】
○墨より黒い下地の上で、墨が浮かび上がって見える理由
○《Series C》を構成する「三つの黒」と、それぞれの光のふるまい
○KUROさんが墨を選び、真・黒色無双と出会うまでの経緯
○真・黒色無双をアート作品に使うときのポイント

KUROとは

KUROは、8歳から書を続けてきた書道家・岩尾諭志さんが、現代アーティストとして活動する際の名前です。
黒い服を着て、黒い作品を手がけ、「世界一黒いアーティスト」という言葉を掲げています。
ただし、これは黒さの世界記録を主張するためのものではありません。
墨を知らない世界の人々に「なぜ?」と思ってもらい、「墨って知っていますか?」と問いかけるための入口です。

現代アーティストKUROのロゴ。黒い背景に「KURO contemporary artist」の文字 KUROのロゴ

その根っこにあるのは、「書が好きだから、死ぬまで書を続けたい」という素朴な願いです。
書は、筆・墨・硯・紙をつくる職人や、それを扱う店があって成り立つ文化。
KUROさんは、その環境を未来へ残すために、墨を書道の外の世界へ持ち出し、新しい需要と使われる場を生み出そうとしています。

墨を選び、真・黒色無双と出会うまで

墨が先にあった

書に欠かせない筆・墨・硯・紙は、古くから「文房四宝」と呼ばれてきました。
KUROさんはその四つすべてと向き合い、硯に強く惹かれて、一時は硯職人になることさえ考えたといいます。

それでも、「自分にとって、これだけはなくなっては困るものは何か」という問いの前に残ったのは、墨だったといいます。
墨は幼い頃から身近にあり、黒という色も、墨の香りも好きだった。
磨る行為も、筆に含ませる感触も、紙に置いたときの表情も知っていた。

墨をたたえた器と筆、筆巻き。KUROが制作に使う道具 KUROが制作に使う道具

KUROと名乗り、黒い作品を手がけるようになったから墨を選んだのではありません。
順序は逆です。墨が先にあったのです。

文化は「保存」ではなく「使用」によって残す

墨の文化を残すとは、完成した古い墨を保存することだけではありません。
新しい墨が今日も作られ、買われ、磨られ、使われる必要があります。
需要がなければ産業は縮み、仕事として成り立たなければ、次の世代がその職業を選ぶ可能性も下がってしまいます。

そこでKUROさんは、書道具の需要を書道界の外側につくる道へ進みました。
現代美術に墨を使う。空間表現に使う。海外へ持っていく。
書道を経験したことのない人にも、墨を見せる。
それは書を存続させるために書道界の外へ出るという選択です。

墨より黒い黒との出会い

《Series C》の直接の出発点は、「墨そのものを主役にした新しい表現をつくれないか」という模索でした。
その過程でKUROさんは、真・黒色無双と偶然出会います。

KUROさんにとって決定的だったのは、「世界一」という言葉ではありませんでした。
墨より黒く見える下地が存在したこと。
そこに、この作品の大きな転換がありました。

なぜ墨が浮かび上がるのか

墨そのものが変わったのではありません。
墨を取り巻く環境が変わったことで、墨の見え方が変わったのです。

白い紙の上では、墨が最も暗い存在です。
しかし墨より黒い下地の上に墨を置くと、黒いはずの墨が相対的に「明るい側」へ移ります。

真・黒色無双は、エアブラシ塗装時の可視光吸収率が99.4%の水性アクリル塗料です。
背景が反射を極端に抑える一方で、墨の表面は下地とは異なる状態にあります。
その差によって、正面では背景に沈んでいた墨跡が、光源や見る位置の変化によって浮かび上がるのです。

現代アーティストKUROの《Series C》「和」を斜めから見た様子。黒い下地の上で、墨と黒鉛の線が光を受けて浮かび上がる 《Series C》「和」(斜めから撮影)
KURO/書道家 岩尾諭志

墨は「黒い色」ではなく、表情を変える物質

伝統的な墨は、煤(すす)と動物の膠(にかわ)からつくられます。
そして墨は、単一の均質な「黒」ではありません。
油煙か松煙か、粒子、膠、水、紙、墨の厚み、筆致、表面の状態によって、見え方が変わります。

つまり墨とは「黒い色」ではなく、粒子・膠・水・支持体・光によって表情を変える物質です。
超低反射の下地の上で、墨は「黒をつくるもの」であるだけでなく、黒の中から光によって現れる物質になります。

《Series C》とは:三つの黒でつくる作品

《Series C》は、超低反射塗料の真・黒色無双、墨、黒鉛という三つの黒を組み合わせ、見る人の移動によって異なる表情を見せる作品です。

この記事で紹介している「舞」「和」「美」「KATANA」は、すべて《Series C》の作品です。

素材 光に対するふるまい
真・黒色無双(下地) 光を極端に返さない
墨 光によって存在が浮かび上がる
鉛筆の黒鉛(2B〜6B) 光を強く反射し、銀色のように輝く

この作品は、黒い物質の表面反射そのものを利用し、現実の光を作品に参加させています。
作品を成り立たせているのは、光源、作品、そして鑑賞者。
その三者の関係によって、はじめて完成します。

現代アーティストKUROの《Series C》「美」。真・黒色無双の黒い下地の上で、墨と黒鉛による線が光を返す 《Series C》「美」
KURO/書道家 岩尾諭志

墨を掘り下げると煤へ、鉛筆を掘り下げると黒鉛へ行き着きます。
その共通項が、炭素(Carbon)でした。
炭素の元素記号「C」から、《Series C》という名前が生まれています。

現代アーティストKUROの《Series C》「KATANA」。黒い下地の上で、刀「へし切長谷部」の刀身が銀色に光って見える 《Series C》「KATANA」
KURO/書道家 岩尾諭志

論考について

論考は、《Series C》の成り立ちと美術史の中での位置づけを、全17章と結論でまとめたものです。

論考の情報
タイトル:墨を未来へつなぐための黒 ── KURO/書道家 岩尾諭志《Series C》における墨・炭素・光と書の再定位
著者:KURO/岩尾諭志(改訂稿 2026年9月)

よくある質問

Q

真・黒色無双は、ほかの黒い絵具と何が違いますか?

A

塗膜表面の微細な凹凸で光を閉じ込めるため、可視光を最大99.4%吸収します(エアブラシ塗装時)。光沢もほぼなく、塗った物の立体感が見えにくくなるほどの黒さが特徴です。

Q

真・黒色無双はアート作品に使えますか?

A

はい。
模型やアート作品などに使えます。エアブラシで重ね吹きすると最も黒く仕上がり、筆塗りも可能です。スプレー時は換気を十分に行ってください。
アート制作向けの製品は、アート向け製品一覧からご覧いただけます。

Q

真・黒色無双の上に墨を置くと、なぜ墨が浮かび上がって見えるのですか?

A

白い紙の上で墨は暗い存在ですが、墨より黒い下地の上では、墨が相対的に「明るい側」へ移るためです。下地と墨の表面状態の差によって、光源や見る位置が変わると、墨跡が黒の中から浮かび上がります。

Q

真・黒色無双で制作した作品を扱うときに気をつけることはありますか?

A

塗膜がデリケートなため、触れたり、水で濡らしたり、ニスでコーティングしたりするのは避けてください。ホコリ対策には展示ケースがおすすめです。

Q

《Series C》はどこで見られますか?

A

個展などの最新情報は、KUROさんのInstagramでご確認いただけます。

まとめ:墨を未来へつなぐための黒

《Series C》で真・黒色無双が担っているのは、
墨より黒い下地として、墨が光によって黒の中から現れるための環境をつくることです。

「書が好きだから、死ぬまで書を続けたい。」
その願いから始まった探究の中で、私たちの黒がその一端を担えていることを、心からうれしく思います。

墨の新しい表情に惹かれた方は、ぜひKUROさんの作品と論考に触れてみてください。

黒い素材で、自分だけの表現に挑戦してみたい方へ。
暗素研では、アート制作に使える製品をご紹介しています。

アート向け製品一覧を見る

真・黒色無双をはじめ、作品づくりに使える超低反射素材

真・黒色無双を塗った木製の球体。光の反射が少なく、立体感が見えにくくなっている

作家情報
現代アーティストKURO(書道家 岩尾諭志)
Instagram:@calligrapher_satoshi

※ 弊社は過去に、KUROさんへ真・黒色無双の材料協賛を行っていました。
本記事は協賛期間の終了後に、ご本人の了承を得て作成しています。

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